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M&Aで事業売却した後に売却事業と同一の事業を売り手が再開する可能性がある場合には、競業避止義務を考慮してどのようにM&Aを行えばよいでしょうか?

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相談の背景

事業譲渡スキームで事業の一部を売却する予定です。

事業譲渡を行った場合には競業避止義務が課され、同一の事業を一定期間行うことができないと聞きました。

質問

同一の事業をM&A後に再開する可能性がある場合には、競業避止義務を考慮してどのようにM&Aを行えばよいでしょうか?

回答

同一の事業をM&A後に再開する可能性がある場合には、事業譲渡スキームではなく、株式売却スキームの採用を優先的に検討しなければならないと考えられます。

事業譲渡を行った売り手には会社法第21条によって、同一の市町村および隣接市町村で同一の事業を一定期間(基本は20年間)は営んではならないという競業避止義務が課されます。
ノウハウと経験を持つ売り手が同一の事業を再開して買い手と競合すると買い手の利益が損なわれる可能性が高いため、買い手を保護する目的です。

株式売却スキームでは、事業譲渡スキームのように法的に競業避止義務が課されないため、買い手の要望によって株式売買契約書で売り手に対して競業避止義務を課すことが一般的です。

そもそも買い手と競合するエリアで同種の事業を売り手が再開することは道義的にNGですが、買い手と営業エリアが重ならず、買い手の応諾が得られる場合には、売却対象事業を会社分割した後に株式売却を行う会社分割スキームを採用することをおすすめします。

ただし、会社分割スキームを採用する場合にも、売り手と買い手が競業することをお互いに了承していること、将来的な営業エリアの拡大の可能性も含めた売り手と買い手が営業するエリアなどをM&A契約書に記載しておかなければ、将来的にトラブルとなる可能性があります。

回答者
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三村尚(みむらひさし)
M&Aアドバイザー
M&Aシニアエキスパート。香川県高松市生まれ。横浜国立大学経営学部を卒業後、百十四銀行、帝国データバンク勤務。2012年より、みどり合同税理士法人グループ勤務。延べ2,000社の企業評価を行った経験を活かし、M&Aを中心とした事業承継サポート、経営コンサルを行う。これまでに40件超のM&A取引の支援実績あり。

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