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収益物件を取得する際、不動産売買取引ではなく、株式売買取引で法人を買収することにリスクはないのでしょうか?

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相談の背景

収益物件である投資用不動産の買収を検討しています。

不動産の所有目的で設立された法人が対象不動産を所有しており、売り手からは不動産を含んだ法人そのものを買収する株式売買取引を提案されています。

質問

収益物件(投資用不動産)を取得する際に不動産売買取引ではなく、株式売買取引で法人を買収することにリスクはないのでしょうか?

回答

法人買収(株式売買取引スキーム)は不動産買収(不動産売買取引)と比べて買収対象の範囲が広くなるため、リスクも増えます。
不動産買収の場合は、不動産に関するリスクに限定されますが、法人買収の場合は、不動産以外に法人全般のリスクが増えるためです。
ただし、株式売買による収益物件不動産の取得は、不動産売買と比べて不動産登記費用が不要で契約手続きも簡単であるなどメリットが多くあります。

不動産買収の場合、不動産に関するリスクは不動産業者から提示される重要事項説明書などである程度網羅されている可能性が高いでしょう。
一方、法人買収の場合は、前述の不動産関連のリスクに加えて、法人の商業登記や運営が適正に行われているか、取引先との契約に問題がないかなど、不動産関連以外のリスクの確認が必要となります。
確認項目が多岐に渡るため、不動産M&Aの取引経験が豊富な専門家のアドバイスが欠かせません。

なお、今回のケースは、買収対象法人が不動産を所有する目的で設立されており、外部との取引も金融機関や賃借人、施工業者など不動産に関連する取引先のみの可能性が高いと推察されます。要するに不動産売買取引と比べても確認項目が大きく増えない(=リスクが限定される)と考えています。

法人買収(株式売買)による収益物件不動産の取得は、事前の確認項目やリスクが増えるものの、不動産売買と比べて契約手続きが簡単であるなどメリットも多くあります。

不動産取得に際して、株式売買取引スキームと不動産売買取引を比べた主なメリットは以下です。
(1)法人(売却対象会社)の株主が変わるのみで不動産の所有者は法人のまま変わらないため、賃借人、管理会社、金融機関など不動産に関係する取引先との個別の契約変更が不要で手続きが大幅に軽減される。
(2)不動産の所有権移転登記が不要のため、登記費用(登録免許税、司法書士手数料など)が不要となる。

逆に株式売買取引スキームのデメリットとしては、法人(売却対象会社)が抱えている係争やトラブル、簿外債務なども見えないリスクも包括的に引き継いでしまうことです。
特に法人が不動産関連以外の事業を行っていたり、業歴が長い場合はリスクも増えるため注意が必要です。

回答者
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三村尚(みむらひさし)
M&Aアドバイザー
M&Aシニアエキスパート。香川県高松市生まれ。横浜国立大学経営学部を卒業後、百十四銀行、帝国データバンク勤務。2012年より、みどり合同税理士法人グループ勤務。延べ2,000社の企業評価を行った経験を活かし、M&Aを中心とした事業承継サポート、経営コンサルを行う。これまでに40件超のM&A取引の支援実績あり。

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