相談の背景
後継者がいないため、M&Aで会社(事業)の売却を検討しています。
質問
売り手側の立場で株式譲渡と事業譲渡ではどちらの方が手続きが楽でしょうか?
回答
売り手側の立場で考えると株式譲渡の方が事業譲渡より手続きが楽と考えます。
事業譲渡は、譲渡対象資産の名義変更や譲渡対象事業に関する取引先・従業員との契約変更を全て個別に行わなければなりません。
そのため、手続きが非常に煩雑となり、基本的には株式譲渡契約のみで手続きが完了する株式譲渡と比べて、事業譲渡は売り手と買い手の双方の負担が増えます。
譲渡対象資産は、不動産、車両、リース物品、機械、什器など多岐に渡ります。不動産や車両の名義変更は、司法書士や行政書士などに依頼する可能性が高く、それぞれの取引に変更手数料や登録免許税がかかります。
取引先は、販売先、仕入先、金融機関、リース会社、水道光熱費の支払先など、譲渡対象事業に関係する全ての先となるため、その全てと契約変更を行うのは気の遠くなる作業です。
また、事業譲渡の場合には、譲渡対象事業に携わる従業員も事業譲渡取引に合わせて移籍するケースが多いでしょう。
移籍といっても手続き上は、売り手会社が当該従業員を一旦解雇し、買い手会社が新たに雇用することになります。
事前に従業員の同意を得なくてはならないため、M&Aを検討していることが情報漏えいする可能性もありますし、そもそも当該従業員が移籍に同意してくれるかどうかも分かりません。
売り手側にとっては、従業員が移籍に同意してくれず、M&Aが破談になった上、情報漏えいしてM&Aを検討していることが取引先に分かってしまうことは避けたい事態です。