相談の背景
後継者がいないため会社をM&Aで第三者に売却しようと考えています。
私はオーナー経営者で株主は私(代表取締役社長)と妻(取締役)の2名です。
会社売却に際して私と妻は取締役を退任する予定です。
M&Aの取引スキームは、株式売買スキームを想定していますが、譲渡益課税(約20%)があるため手取り額は大きく減ると聞いています。
質問
M&Aによる会社売却後に売り手側(株主)の手取り額をより多くするためにはどのような方法があるでしょうか?
回答
一番はより高い評価でより高く買収してくれる買い手を探すことですが、本件の質問は、より手取り額が増える取引スキームを知りたいという質問と認識して回答します。
本件のようにオーナー経営者夫妻が大株主および取締役であり、会社売却に際して取締役を退任する場合には、税制面での優遇が大きい退職金支払いを株式売買を併用することが一般的です。
M&A業界で「(役員)退職金スキーム」や「退職金支払スキーム」などと呼ばれるものです。
株式売買で得た譲渡益に対する課税は約20%です。一方、退職金は対象者の勤続年数で異なるものの一定額が課税対象から控除されるほか、累進課税となっているため一定額までは税率が譲渡益課税率(約20%)を下回っています。
具体的な方法は、譲渡対価を株式売買金額と退職金受取金額に振り分けて受け取ることです。
譲渡対価のうち、より税率がお得な範囲(譲渡益課税率=約20%以下)で退職金を受け取り、残りを株式売買金額として受け取ります。
株式売買スキームも退職金スキームも支払われる額面の金額は変わりませんが、退職金スキームの場合には売り手側の支払う税金が減るために最終的な売り手側の手取り額が多くなります。
また、退職金スキームを採用した場合には、株式売買金額(=売却対象企業の株価)が圧縮され、買い手側の支払い金額(投資額)が減るため、買い手側にもメリットがあります。