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M&Aで買収した不動産が実態と一致していなかった事例

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トラブル内容

地方の食品製造会社を他県の同業者が買収した案件で、売り手から譲り受けた土地に未確認だった国有地および県有地(道路および水路)が含まれていたことがM&A後に判明した事例です。

M&A契約前の買収監査(デューデリジェンス)において、公図および不動産登記簿謄本などの確認は行っていましたが、司法書士など不動産の専門家のチェックは受けていませんでした。

本件ではM&A後に買い手が売り手から譲り受けた土地の一部を分割して他者に譲り渡す必要があったことから、M&A後に土地家屋調査士および司法書士に測量や登記の手続きを依頼し、偶然土地に国有地および県有地が含まれていることが発覚しました。

買い手は、国および県から国有地および県有地を買い取ることとなり、買取資金や登記費用など余分な費用負担が発生しました。

トラブル回避策

本件で買収監査の際に確認していた公図は、「地図(14条地図)」ではなく、「地図に準ずる図面(14条地図に準ずる図面)」であるにも関わらず、詳細の確認ができていなかったことがトラブルの原因と考えられます。

公図とは、法務局に備え付けられている土地の位置や形状を確認するための法的な図面です。
公図は、「地図(14条地図)」と「地図に準ずる図面(14条地図に準ずる図面)」の2種類に分類されています。
「地図(14条地図)」は、国の事業である地積調査によって、測量して作成された高精度な図面です。
一方、「地図に準ずる図面(14条地図に準ずる図面)」は地籍調査が未実施のエリアの図面であり、測量精度が低い時代に作製された図面(旧公図)の写しであることから正確性に欠けています。

また、本件のように国有地や県有地が書かれていないこともあります。

地方を中心に地籍調査が未実施のエリアも多く残っているため、公図が「地図に準ずる図面(14条地図に準ずる図面)」である場合は、司法書士など不動産の専門家に依頼して、実態と不動産登記に相違がないか確認することが大切です。

注意喚起

この投稿は、2022年6月時点の情報です。
ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。

回答者
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三村尚(みむらひさし)
M&Aアドバイザー
M&Aシニアエキスパート。香川県高松市生まれ。横浜国立大学経営学部を卒業後、百十四銀行、帝国データバンク勤務。2012年より、みどり合同税理士法人グループ勤務。延べ2,000社の企業評価を行った経験を活かし、M&Aを中心とした事業承継サポート、経営コンサルを行う。これまでに40件超のM&A取引の支援実績あり。

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