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M&Aで買収した事業に利用する賃借不動産の契約変更に関するトラブル事例

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トラブルの内容

多角化経営をしている売り手会社から、不採算であった一部事業を事業譲渡のスキームで買い手会社がM&A(買収)しました。

M&A後、買収した事業に利用している賃借不動産(店舗)の契約について、売り手会社から買い手会社への借主の変更を貸主に申し出たところ、貸主から退去もしくは賃料の大幅な値上げを求められた事例です。
なお、賃料は近隣の相場と比べると格安でしたので、貸主の値上げ要請は理解できるものでした。

好立地の賃借不動産であり、移転後に売上が低下する恐れや移転費用などを考慮して、買い手会社が賃料の値上げに応じることで決着しました。買い手は、想定より買収事業の経費が増える結果となりました。

トラブル回避策

可能であれば、M&Aの契約(今回は事業譲渡契約)の前に借主(売り手会社)から貸主に対して、買い手会社が賃借不動産を引き続き利用できるよう事前確認しておくことが望ましいと考えます。

貸主に事前確認できない場合には、賃借不動産の利用を引き継げない時の対応や賃料が値上げされた時は値上げ相当分をM&A対価から減額することなどを売り手と事前協議して、M&A契約書に明記しておくことがトラブルの回避に繋がります。

また、今回は賃借不動産の賃料が近隣の相場と比べて著しく安いことが買収監査(デューデリジェンス)などで事前に判明していました。
買い手は、契約更改の際に値上げを要請される可能性を考えて、買収対価を検討することや買収後の事業計画を作成することが望ましいでしょう。

注意喚起

この投稿は、2022年6月時点の情報です。
ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。

回答者
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三村尚(みむらひさし)
M&Aアドバイザー
M&Aシニアエキスパート。香川県高松市生まれ。横浜国立大学経営学部を卒業後、百十四銀行、帝国データバンク勤務。2012年より、みどり合同税理士法人グループ勤務。延べ2,000社の企業評価を行った経験を活かし、M&Aを中心とした事業承継サポート、経営コンサルを行う。これまでに40件超のM&A取引の支援実績あり。

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