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M&Aで会社を売却する際の買い手の選び方はどのような点に気をつけるとよいでしょうか?

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相談の背景

後継者不在のためM&Aで第三者に会社を売却しようと考えています。

私が3代目社長で設立60年超の老舗企業として地元では一定の知名度があります。

従業員や取引先を大切にしてくれる買収先を探したいと思っています。

質問

M&Aで会社を売却する際の買い手の選び方はどのような点に気をつけるとよいでしょうか?

回答

質問者が買い手を選ぶ際に気をつけることは以下の項目および順番と考えます。
1番目:経営が上手な優良会社
2番目:従業員や取引先を大切にする会社(社風や社長の経営観が似ている会社)

「従業員や取引先を大切にする会社」が1番目じゃないの?と思われるかもしれませんが、「経営が上手な優良会社」を選ぶことが優先すると考えます。勿論、経営が上手な優良会社であっても従業員や取引先を大切にしない会社であれば買い手候補にはなりません。

「従業員や取引先を大切にする会社」であったとしても優しさゆえに儲かっていない会社は多いものです。
買収後に従業員や取引先を大切にしたとしても会社がつぶれてしまっては元も子もないので、やはり「経営が上手な優良会社」に引き継いでもらうことが重要です。

「経営が上手な優良会社」の見分け方は、買い手の決算資料を見ることです。
自社(売り手)の評価を気にするあまり、相手(買い手)の評価を忘れているケースがよくあります。自社(売り手)の情報は開示しているのですから、相手(買い手)の情報も十分に開示してもらいましょう。
また、第三者の評価として、信用調査会社(帝国データバンク、東京商工リサーチなど)の信用調査報告書を合わせて確認することも有用です。

決算資料を見るポイントは主に2点です。
(1)経常利益:現在の買い手が稼ぐ力が分かります。できれば過去3年分が見られると最近の傾向がつかめます。
(2)株主資本(自己資本):過去に買い手がどれだけ稼いできたかが分かります。株主資本は過去の買い手の利益が積み上げたものだからです。

数字(決算資料)だけで実態は分からないという意見もありますが、少なくとも決算資料で数字を確認することは重要だと思います。

「従業員や取引先を大切にする会社」の見分け方は以下です。
(1)買い手経営者との面談:これまでに買い手会社をどのように経営してきたか話を聞くことで経営観が分かります。
(2)買い手会社への会社訪問:会社訪問した際の買い手会社の雰囲気、社員の明るさなどは非常に参考になります。
(3)買い手の離職状況:離職率の高い会社は従業員を大切にしていない可能性があります。ハローワークやインターネットで買い手の求人状況を確認することも有用です。
(4)退職者・取引先など外部の評判:インターネットや口コミで買い手の情報を地道に集めます。特に退職者からの話は信ぴょう性が高い場合が多いです。また、買い手に関する良い情報は外部から集まりにくいものですが、悪い情報は外部から集めやすいものです。

回答者
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三村尚(みむらひさし)
M&Aアドバイザー
M&Aシニアエキスパート。香川県高松市生まれ。横浜国立大学経営学部を卒業後、百十四銀行、帝国データバンク勤務。2012年より、みどり合同税理士法人グループ勤務。延べ2,000社の企業評価を行った経験を活かし、M&Aを中心とした事業承継サポート、経営コンサルを行う。これまでに40件超のM&A取引の支援実績あり。

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