相談の背景
M&Aで他社の買収を検討しています。
トップ面談で感触がよく、条件も折り合いそうなことから基本合意書を締結し、買収監査(デューデリジェンス)に進む予定です。
買収対象会社(売り手)は、機械部品製造業、従業員数10名、売上高3億円、総資産4億円、売買株価想定額2億円です。
当社(買い手)は売り手と同業の機械部品製造業で今回の取引が初めてのM&Aとなります。
質問
買収監査(デューデリジェンス:DD)には財務DD、法務DDなど色々な種類があると聞きました。どのようなDDをすればよいのでしょうか?
回答
一般的な買収監査(デューデリジェンス:DD)としては、財務DD、税務DD、法務DD、労務DDなどがあり、その他にも不動産DD、事業(ビジネス)DD、人事DD、システムDD、環境DDなどがあります。
予算が許すのであれば、全てのDDを実施すれば安心ですが、取引想定額2億円のように中小企業のM&Aの場合、DDを含む調査に掛けられる費用は、取引想定額の数%が限度と考えられます。
各DDをそれぞれの専門家に別個に依頼すると相当な費用がかかってしまいます。
株価算定を行うための財務DDが主体となりますが、簡易に税務、法務、労務の観点からもアドバイスをもらえるM&A取引のDD経験が豊富な専門家(M&Aアドバイザー、税理士、会計士など)に依頼し、DDが財務面だけに偏らないようにすることが望ましいと思います。
専門家にDDを依頼する際に財務DDだけでなく、税務や法務、労務の観点からもアドバイスが欲しい旨を伝え、対応できるかどうかを確認することでその専門家の経験度を図ることも可能です。
会計士や税理士などの場合、財務DDしかできないと断られるケースも多いのですが、筆者がM&A取引に関するDD業務を行う際には、財務DDとして業務を受託するものの、財務DD報告書とは別に税務、法務、労務の観点から調査時に気付いた留意点を報告し、M&A取引契約書に生かしてもらえるような対応をしています。
例えば、法務の観点で株主の履歴確認不備、大口取引先との取引契約書に内在するリスク、労務の観点で就業規則の不備や未払い残業代、不動産の観点で損害保険の加入漏れ、不動産の登記面積錯誤などが、財務の観点以外で散見されます。