相談の背景
業歴50年超の会社の三代目オーナー経営者です。
経営する会社が業績不振のため法的整理も視野に入れて先々の方向性を模索しています。
過去の投資失敗に伴う借入過多などから、債務超過および赤字が続く厳しい財務内容となっています。金融機関からの借入も返済猶予(リスケジュール)してもらっています。
質問
債務超過および赤字の財務内容の会社でもM&Aで会社を売却することは可能でしょうか?
回答
債務超過および赤字の財務内容の会社でもM&Aで会社を売却することは可能です。
ただし、売却対象会社(売り手)に優良な取引先や高い技術力があるなど、債務超過および赤字を上回る魅力があることが前提です。
また、その魅力を評価して、債務超過および赤字を解消する自信がある買い手を探さなければならないため、難易度は非常に高いと考えられます。
また、債務超過および赤字の場合、債務超過額を上回る営業権がつかない限り、株価はゼロ円以下のマイナスとなります。その場合のM&Aの株式売買は備忘価額で取引されることが一般的です。
備忘価額は、例えば発行株式数が100株であれば100円とすることが多いようです。
実質ゼロ円での売買取引となりますが、会社が存続すること、従業員の雇用を守れる可能性が高いこと、売り手オーナー経営者個人の連帯債務保証を外せることなど、法的整理に比べると売り手にもメリットが大きいと考えられます。
なお、過去に筆者がアドバイザーとして関わった案件で、粉飾決算をしている実態は8,000万円の債務超過かつ赤字の売却対象会社(売り手)を買収したケースがありました。
売買金額(株価)は備忘価額での取引でしたが、8,000万円の債務超過であったことを考えると買い手は8,000万円の営業権(のれん)をつけたことになります。
売却対象会社の業種は参入障壁が高く、優良な売上先(顧客リスト)を持っていたことを買い手が高く評価したことが買収の決め手でした。